米国特許法第102条(e)の適用要件
具体的には、米国特許法第102条(e)とは、後願に係る出願が、当該出願の発明前に別の者によって米国にされた特許出願(先願)であって米国特許法第122条(b)の規定によって公開されたもの、または、当該出願の出願人による発明前に別の者によって米国にされた特許出願に記載されたものである場合は、特許を受けることができない旨を規定します。
1.先願と後願とのあいだで、出願人が同一でなく、かつ発明者も同一で はないこと。
*先願の発明者が、後願の発明者と同一(完全同一)でないかぎり、出願人が同一であっても、先願は後願を排除することができます。ただし、先願 の記載が、発明者の成果に起因するものである場合は適用されません。この場合は、その旨を主張する宣誓書等を提出することができます。
2.後願排除効を有する範囲
先願に記載の事項(請求の範囲以外の記載も含む)です。
3.時期
・先願の基準日は米国出願日です。
継続出願や分割出願の場合は先の出願日、仮出願に基づく出願の場合は仮出願の出願日(Giacomini判決)です。ただし、パリ条約に基づく優先権主張出願の場合は優先日ではなく実際の米国への出願日です。
・後願は、発明時を基準として審査が行われます。
実務的には、出願日を発明日と仮定して審査が行われます。出願人は、先願にかかる出願の出願日より前に発明をした旨を主張する宣誓書等を提出することができます。
4.留意点
先願にかかる出願が、PCTによる国際出願である場合は、米国を指定国として指定しかつ英語により国際公開された場合にのみ国際出願日を基準として後願排除効を有します。なお、2000年11月29日より以前に出願された国際出願については、国際公開が英語でされていなくとも、米国への国内段階移行日が後願排除効を有する基準日となります。
このように、米国特許法第102条(e)は、日本特許法29条の2の規定に対応しますが、相違点もあります。代理人は、この違いをしっかりと認識しておく必要があると考えます。